花房観音 -Hanabusa Kannon-

情交未遂

あなたの話を聞きたい、あなたのことを知りたい、誰も知らないあなたを、私の言葉で書き残したいーー言葉でまぐわいたいのです

弁護士・タレント 角田龍平 ~少年は龍になった~ (2012年)

2016年9月19日   インタビュー:花房観音   写真:花房観音   場所:哲学の道にて

――角田さんの恩人は?

 

「紳助さんと巨人師匠です」

 

――弁護士になってから、紳助さんとは会われました?

 

「お会いしてはいないんですけど、事務所を独立するときに、高校の先生とか今までお世話になった方全員に挨拶状を送ったんです。その時に、紳助さんは恩人なので、17年お会いしていないので、僕のことなんかもう忘れてはるとは思ったんですが、紳助さんと巨人師匠のおかげで積極的に生きられるようになったので、どうしてもお礼を言いたくて吉本宛にお手紙をお送りしました。そしたら、紳助さんから温かいお言葉の絵葉書をいただきました。その直後に、ああいうこと(暴力団との交際による引退)があって、それからは連絡とる術もないんですが,紳助さんと巨人師匠が僕の生涯の恩人であることは変わりがありません」

 

――角田さんは、ラジオと共に育ってきたと思うんですけど、やはりラジオがやりたいですか。

 

「ラジオのパーソナリティをやってるとパーソナリティズ・ハイとも言うべき感覚を味わえる瞬間があるんです。またあの瞬間を味わいたいですね」

 

――サイキックの影響というのは大きいですか。

 

「サイキックというのは終わり方が終わり方だったんで、ゴシップを垂れ流すラジオみたいな誤解を受けていますが,決してそうじゃなかった。人物や社会を邪推する楽しさを教えてくれたのがサイキックだった。それに邪推すると言っても、北野誠さんも竹内義和さんも根本は熱い人なので、厭世的に世の中を見ているわけじゃなかった。僕は、サイキックに物の見方・考え方を教わりました。あと、サイキックにゲストで出ることが多かった浅草キッドさんや大槻ケンヂさんの著作に触れるきっかけにもなりましたし」

 

――ナインティナインさんとも共演されたんですよね。

 

「ナイナイさんのオールナイトも司法浪人の時、抜け出せない暗闇の中でずっと聞いていたので、ナイナイ弁護士軍団として岡村さんの法律相談に答える役回りでゲスト出演した時は感無量でした」

 

――ファンという立場ではなくて、対等な立場で共演できるのって、いいですよね。つくづく思うんです、本当に憧れる、好きな人たちとは、仕事という場所で対等に会いたい。サイン会とかイベントの客とかのファンという立場ではなく、同じところに立ちたい。あと、誰か憧れの人とか会いました?

 

「僕、30年来のプロレスファンなんですけど、プロレスラーの武藤敬司選手にオールナイトのゲストに出てもらって技をかけられた時は嬉しかったですね。あと、立命館大学の同級生が、新日本のエースの棚橋弘至選手なんですけど、1年生の最初の英語のクラスで隣にいたのが彼だったんです。隣の人と英語で喋りなさいという授業で、彼は自分の趣味を『pro-wrestling』と話しかけてきたので、僕は自分の趣味を『listening to radio』と答えた。その彼が14年の時を経て,IWGPヘビー級チャンピオンになって僕のラジオに来てくれたんですよ!こんないい話、ないですよ」

 

――弁護士って、どうやって選ぶんですかね。

 

「基本的には知り合いの弁護士に頼むのが安心なんでしょうけど、ほとんどの人が知り合いなんていないですからね。僕がもし事件を起こして弁護士を選ぶときは、まず話をじっくり聞いてくれて、そのうえで悪い見通しも話してくれる弁護士を選びますね」

 

――ぶっちゃけ、儲かりますか。

 

「僕は他の仕事したことないから、儲かっているかどうかの基準がわからないんです。ただ、人様のお金を預かったりする仕事ですんで、儲かっているふりをしなければいけない職業ではあります」

 

――9年受け続けられましたけど、私の知人でも10年以上受けていた子がいます。

 

「ざらにいましたね。10年以上の人は。独特の業界でしたね、予備校に住民票があるような人もいました。今は制度変わってロースクール出た人しか受けられないんですけど、昔の司法試験はそうじゃなかったので、味わい深かったです」

 

――大平光代さんみたいに、極道の女から弁護士になった方もいたり。

 

「あの人は一発合格でしたね。だから元々勉強ができるんだと思います。勉強のできる人が、たまたまぐれてただけというか」

 

――犯罪とかも関わるわけだから、いろんな人と対峙されてますよね。

 

「僕もそうでしたが、弁護士の大半は中学の時、カツアゲに遭う側の人間だったわけです。『中学の時イケてない弁護士』なんです。それが、今はカツアゲをする側を弁護するわけですから不思議なもんです。中学の時、ヤンキーが大嫌いでしたけど、今少年事件で出会うヤンキーは一人一人『個』として見れば素直な子が多いです」

 

――イベントなどでも、トークの相手の影山教授から、時事問題をネタに、「角田君、これ法律的にはどうなん?」とか聞かれてましたし、ちょっと私も伺いたいんですが……私、最初の男に数百万貢いでるんですよ。貸してって言われて貸して、でも借用書は書いてくれなかった。振り込んだ用紙は持ってるんですけど。これって訴えたら返してくれますかね?

 

「向こうが贈与だって言いはったら、揉めますね。借りたんじゃなくて贈与だと言われたら。裁判て、皆、『出るとこ出よう』って言うじゃないですか。でも出るとこ出ようって言ったからと言って、神様から見た真実が明らかにされるわけではなく、あくまで証拠に基づくゲームで、だからちゃんとこっちがカードを用意できん限りはこのゲームは負けるんです」

 

――そうかぁ……証拠かぁ……。

 

「皆さん、裁判に対して過信してて、なんかあると訴えますよと言いますけど、それで必ずしも真実が明らかになるわけじゃない。例えば大相撲の八百長、過去に週刊ポストが記事にして訴えられたら相撲協会が勝ったことがあった。でもそれから例のメールの騒動があって、八百長の証拠が出てきた。神様から見たら、過去の裁判の時点でも名誉棄損ではなかったはずなんです、でもその当時はそういう証拠がなかったから、ああいう裁判をするしかなかった」

 

――逆恨みとかされませんか。

 

「橋下事務所にいた時に、相手方が事務所に来て、依頼者が金を払わんのなら弁護士が払えと言ってきたんです。その時、事務員と、弁護士は僕しかいなくて、揉め事は嫌いだけど対峙せざるをえなかった。弁護士が払う義務は法律上ないと言っても、おてんとさまが許さんとか向こうが言いだして、揉みあいになりました。なんやお前って向こうがジャケットを一旦脱いで、すぐにまた着て、池乃めだかか! って言ってたら、事務員が警察に通報してくれたんです。天満警察が来て、その人に任意同行を求めて所持品検査をしたら、刃渡り何10cmかの刺身包丁を持ってたんです。あの時、僕がもっとその人を追い詰めてたら、刺されてたかもしれません。全然池乃めだかじゃなかった。それは橋下さんが知事の時だったから、ニュースになったんですね。橋下事務所に刃物男乱入って」

 

――ニュースで、ありましたね!

 

「でも僕はニュースになるなんて思ってなかったから、普段通りにその日もツイッターで丁度『たちあがれ日本』が出来たときだったので、セックススキャンダルがあった山崎拓が新党『勃ちあがれ日本』に参加へ、とかいうくだらない下ネタを呟いてて。そしたら友達とか、そんな時によくそんなくださらん下ネタつぶやくなんて、なんて強靭な精神なんだとか言われました」

 

――下ネタ、好きですよね。

 

「好きですね。でもうぶで、小さい時から、小説読んで性描写があっても意味がわからなかったんです。何で子供が生まれるとかも小6まで知らなかった。森村誠一や西村京太郎の小説の性描写とかも、口の中で射精するとか、何のことか全くわかりませんでした」

 

――私は小学校の時かな、森村誠一の小説で、レイプしてあそこに野菜をつっ込むとか、すごい衝撃でした。

 

「僕はいろんなことを知ってる子供やったのに、性的なことだけ知らなかった。小学校の時も、男子が女子より圧倒的に多かったので、男子が女子トイレの掃除もしてたんです。トイレの隅にある、あの小箱は何? とか女子に訊くと、にやにやして『もう、角田くん!』とか言われるけど、ほんまにわからなかった。社会のことは知ってたんです。ニュースステーションとか見てましたから、『チェルノブイリがどうしたとか、永田町の論理がどうした』とか言う子供でした。でもオナニーの存在も知らなかったんです」

 

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