花房観音 -Hanabusa Kannon-

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4/10  新刊「楽園」(中央公論新社)発売

 新刊が出ます。

 

 4/10に、「楽園」という本が、中央公論新社さんより刊行されます。

 

 京都に、かつて「楽園」と呼ばれていた一角があります。

 学生時代に、私はその場所が謎でした。

 そこが男が女を買いに来る場所だと知って、なぜ「楽園」なのか、謎はさらに深まりました。

 セックスを売る女、買う男たちが集う、その場所が。

 

 3年ほど前、「楽園」は警察の手入れが入り、営業を終えました。

 今では静かな住宅街です。

 

 かつて「楽園」で働いていた友人と、その場所を歩きました。なぜかものすごく、懐かしく感じました。

 3年前、小説家になる少し前に、怪談社のイベントにはじめていったのは、怪談に興味があったわけではなく、そのイベントが楽園の歌舞練場で行われたからです。

 建物の中に入りたくて、怪談社のイベントに行き、そこで怪談社や三輪チサさんと知り合い、その後、怪談を書くきっかけにもなりました。

 今ではその建物は「五条会館」と呼ばれています。

 

 「楽園」は、そのかつての遊郭跡に住む女の物語です。

 若さを失いつつある、「女としての価値」と対峙せざるをえなくなった女たち――。

 

 いったい、いつまで「女」でいないといけないのか。

 もう女であることにうんざりしているのに、女のままでいるなんて――。

 

 私自身も、自分が「女」であることに、うんざりしています。

 早く「女」を捨てられたら、そこから降りられたらと、特に、昨年はひしひしと考えていました。

 だって、女でいつづける限りは、望むものが多くて、苦しいもの。

 手に入らないものを、欲しがってしまうもの。

 

 なぜ、女のままでいるのか、女を捨てられないのか――。

 でもそれは、女だけが知る至福や快楽を知っているからなのでしょう。

 

 

 禁断の木の実を口にして、楽園を追放された男女が聖書には描かれています。

 やはり、あの場所は「楽園」という名が相応しい。

 

 

 

 

 

2014年4月03日
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