弁護士・タレント 角田龍平 ~少年は龍になった~ (2012年)
2016年9月19日 インタビュー:花房観音 写真:花房観音 場所:哲学の道にて
――最近、竹内義和さんとよくイベントされてますけれど、もともと竹内さんと北野誠さんの「誠のサイキック青年団」の熱心なリスナーだったんですよね。
「サイキックは、中学校の頃から聞いてましたね。兄がリスナーで、すすめられたんです。僕がオールナイトをはじめた頃に、サイキックが終わることになって、20年間聞いてて葉書を書いたことは無かったんですけど、20年の想いを伝えたくなって、10枚ぐらい想いをつづって手紙を出したら、竹内先生からメールが来ました。一緒にイベントするようになったのは、この半年ほどです」
――テレビに出てて弁護士でというと、やはり誰もが元上司でもある橋下さんのことを連想すると思うんですけれど、角田さんは国政に出る気はないんですか。
「よく言われるんですが、全くその気はないです。もし出るつもりなら、橋下さんの事務所はやめてないですし,アダルトサイトのインタビューも受けないですよね」
――タレント業は、楽しいですか。
「30歳まで司法浪人と言ったら聞こえがいいですが実質ニートだったわけですよ。それで32歳で急にテレビとか出だして、最初は今まで会えへんかった人に会えて単純にうれしかったんですよ。でも1年ぐらいして、これは僕のやるべきことじゃないかなとも思うようになりました。最初に、爆笑問題さんの特番に出た時に、そこにビートたけしさんも出られて、それこそ高校の時に最初に会いたかった人で、回り道しましたけど、やっと会えたし、ミーハーな感じで喜んでました。でも新人の弁護士がコメンテーターとして出るのは、NSCの生徒がM1の審査員をするようなもん。それに他の弁護士が就いている事件について、弁護士とはいえその事件については一般の人と同じようにマスコミ報道の情報しか知らないのにしたり顔でコメントするのは、キャンプを見に行かない野球評論家と一緒なんで、いかがなものかと。マスコミは報道しない当事者しか知りえない重要な事実というのはいっぱいありますから。今でもたまにコメンテーターの席に座る僕も含めて,コメンテーターは人品骨柄の卑しい人がやる仕事ですよ。それにどうしてもコメントを求められるのは刑事事件になりますが、ワイドショー的な捉え方は、一面的であって、犯人を決めつけたりするところに、自分が加担したらあかんなと。報道って、不公平ですから。芸能人が事件起こしたらボロクソに叩かれる、真相わからないのに。そういう時に、弁護士としてコメントするのは、どういう立ち位置をしたらいいか難しいですし、短い時間の中で伝えきれない」
――編集されて、肝心なところをカットされたりもしますしね。どうしてもテレビの都合のいいように作られてしまう。発言も、キャラクターも。
「例えば、過失による重大な事故が発生した場合、テレビは完全に遺族の側に立ってVTRを編集する。確かに、大事な家族を事故で奪われた遺族が怒って厳罰を求めるのは当然です。ただ、刑法上の過失責任を問うためには厳格な要件を充たさないといけないのに、結果の重大性に目を奪われ、被疑者・被告人の主張をまともに取り上げない。それにテレビはターゲットを変えて誰かをいっせいにフルボッコにする。もともと僕は天邪鬼で、マイノリティにシンパシーを感じるので,フルボッコに加担するのは少数者の味方にならなあかん弁護士のやることじゃない」
――イベントみたいな場所で喋られるのはどうですか。
「イベントは時間をかけて自分の考えを丁寧に喋れるのがいいですね。と言ってもほとんどアホな話に終始してますけどね」
――オール巨人さんとは、再会されたんですか。
「巨人師匠には、受験勉強中も、50歳の誕生日会とかに呼ばれてたんです。その時に、お前だったらできると励まされて――何の根拠もないんだけど、自分の中ではその言葉は大きかった。成功体験のない人生だったんで、人に褒められたから漫才やってて、その時から巨人師匠の励ましは、常に支えでした。司法試験に合格した時も、合格を報告するお手紙を書いたら、すごく喜んでくださって、それからまたお会いするようになりました。巨人師匠の弟子って、皆、巨人師匠が大好きなんですよ」
――巨人師匠のお弟子さんて……巨人さんは正統派の漫才師なのに、コラアゲンはいごうまんさんとか、有吉弘之さんとか、角田さんとか、ちょっと人とは違う芸風の方ばかりですよね。
「お正月に僕のように芸人を辞めて他の仕事をしている弟子が、みんな巨人師匠のお家に集まるんです。コラアゲンさんも正統派とは対極の芸風とみられがちですが、正統派の巨人一門の基礎があるからあえてあの芸風にたどり着いたはずです。有吉さんともテレビで一緒になった時、巨人師匠の話をしたりします。僕は巨人師匠と一緒にお酒を呑んでると抱きつきたくなる気持ちを必死で抑えてるんです。それぐらい好きです」
――洛星高校って、男子校ですけど、女性とおつきあいとかされてました。
「テレビに出るまでは、女子と喋ったことがなかった。それがテレビに出るようになった途端彼女ができた。それまではひたすらラジオ聞いて、悶々としてました」
――高校の時にテレビとか出るようになったら、変わりました?
「しょちゅう逆ナンされるようになりましたね。その時が人生で一番モテたかも。あいつ紳助のテレビ出てんねんとか言われて……電車に乗ってて知らない女子高生から、角田君だ! これから一緒にどっか行かへんと誘われたこともありましたけど、性病持ちに違いないと決めつけて、ついて行きませんでした」
――奥さんとは今、一緒に大阪で事務所をされていますよね。昼も夜も一緒なわけですが、それは、平気なんですか? うちは夫婦で在宅仕事ではあるんですけど、夫は会議とか取材で外に出ることが多いので、私もひとりになる時間が結構あってホッとするとこあるんです。ずっと一緒にいると、しんどくないんかな、と。
「それはないですね。竹内義和さんとのイベントの打ち上げとか、大阪一ゲスい話している場所にも付き合ってくれますし、僕の人格が破綻している部分も含めて受け止めてもらってます。今のところは」
――合ってるんですかね、それだけ一緒にいられるのは。
「弁護士の仕事って、ドラマみたいなカッコいいことはなくて、示談の電話をかけてひたすら謝ったりとか……そういうところも彼女の前なら見せられます。気をつかわないですね、いい意味で」
――テレビに出ることで、弁護士として得したことはありますか。
「依頼者に『先生、テレビと違って直接喋ったら賢いですね』とか言われるので損してるのかもしれません。ただ、相手方に知ってもらっていると、示談をし易くいということありますね。刑事事件の被害者の方にサインを求められたこともありますし」
――弁護士さんていっぱいいるし、いざ必要なときにどうやって選んだらいいんやろというのはあります。
「あと、テレビ的には、弁護士としておもしろいのは、めちゃくちゃデキるとか、弁護士なのにアホとか、そういうキャラが必要なんだけど、僕はその辺、中途半端ですね。平成教育委員会とか出ても、16人中4位とか。中途半端にデキる」
――橋下さんは当初、「茶髪の弁護士」って、そのらしくなさが話題になりましたもんね。