花房観音 -Hanabusa Kannon-

情交未遂

あなたの話を聞きたい、あなたのことを知りたい、誰も知らないあなたを、私の言葉で書き残したいーー言葉でまぐわいたいのです

AV男優・森林原人

セックスでしか伝えられない

2014年4月20日   インタビュー:花房観音   写真:木野内哲也   場所:渋谷道玄坂のラブホテルにて

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――森林さんは、これからもAV男優をやっていきたいですか?

 

「ずっとやっていきたいです」

 

――セックスが好きだから? それとも女が好きだから?

 

「うーん、セックスが好きなだけならプライベートでセフレがいっぱいいたらそれでいいのかというと、そうじゃないし……。気持ち良さで言うと、僕はAVのセックスとプライベートが一緒なんですよ」

 

――それは意外。現場はやっぱり仕事だから、プライベートの恋人とのセックスがいいと言う話は聞きますけど。

 

「僕もそういうのを聞くんですけど、肉体的快感度は同じなんです。現場で興奮するし気持ちいいし、その上、自分が気持ちよかったセックスを記録してもらえる。僕は、自分がいいセックスしたって思えた作品は、買うんですよ。それを見てオナニーもする」

 

――えー! そうなんですか!

 

「AVのセックスって、フィギュアスケートみたいに、加点項目がいっぱいあるんですよ、ハメしろが見えてるとか、尺に納まってるとか、女の人が気持ちよくなってるとか、そんな中で女の人とコミュニケーションとれてるかとか、女の人をおいてけぼりにして、自分勝手になっていないかとか。それはどんなセックスをしても相手がいる限り、コミュニケーションは必ずとれるんですよ。口ではののしったり、乱暴にビンタしたりするけど、バレないところで頭の裏に手をまわしたりとか。ちゃんと心がつながってるときは、気持ちがいい。それが記録に残ってるんです」

 

――森林さんは、本当にセックスが好きなんですね。AVのセックスも含めての、セックスが。

 

「僕は本当にAVのセックスが好きなんです。僕はセックスの意味というものを3つで考えていて、まず生殖、次に性欲処理、そしてコミュニケーション。

 僕たちがやっているのは、性欲処理用のセックスを見せているんですが、でも現場では男優も女優も人間だからコミュニケーションが必ずどっかであるんですよ。映らないところで。代々木さんの現場は、このコミュニケーションを強めてやるセックス。でも別の現場でパフォーマンス的なものを見せろと言われても、必ずコミュニケーションは存在する。だからプライベートのコミュニケーション100%のセックスとそんなにかわんないんです。ただプライベートではセックスにいたる過程がありますけど、現場では会ってすぐにはじまっちゃいます。

 でも、一番最初、強い柔道家じゃないですけど、抱き合った瞬間、キスした瞬間に、この人が心を開いているか警戒しているのか、男優はわかります。目の前の女性が、この男優に身体をさわられても大丈夫どうかか、傷つけられないように構えてる。そこから心がほどけていく感じが、それが男優のコミュニケーション能力なんでしょうね。

 ベテランはそれぞれが自分のスタイルを持ってそれをやっています。相手に安心させるスタイルを。相手に期待させて気持ちよくしてやろうという気持ちがあるのが若手。ベテランは、まず安心してもらう。

 人に身体を預けるってのは、すごいことですから、だからこそ安心してもらえることがその次の段の快感につながります。最初から快感を与えてやろうというスタンスだと、絶対にたどり着けない。このコミュニケーションが、ベテランで業界に残る人はとれているんです。でもそれを伝える術の言葉を持たない。自分自身の体のやり取りとしては持ってる。セックスってこういうふうにコミュニケーションをとれるんだって能力を男優はそれぞれ持っている。他者に伝えるには、それを誰かに言語にしてもらうしかないですね」

 

――私もそれはすごく思います。男優さんたちのコミュニケーション能力というのは、セックスにおいてに留まらない。そしてその能力こそが、今、世の中に必要なものだと思います。セックスにおいても、技術じゃなく、医学的知識でもなく、ましてやオナニーツールではなく、生身の人間相手のどうして関わっていくか。人間の営みって、やっぱりそこだと思うんです。他者とかかわること。そのもっとも深い手段がセックスだと思う。だから好きになると、セックスしたい、相手を知って、深く関わりたいから。オナニーで自分の身体を気持ちよくするんじゃなくて、セックスして他人の関わることでしか、人の営みは存在しないと思います。オナニーを否定はしないけれど、やっぱり全て、人との関わりはセックスであるべきなんです。

 たとえば小説だってそう。読者不在の自分だけが気持ちよくなるオナニーをしてる小説というのは、よくない。たとえ自分のことを描いていても、そこに他者との交わりがなければいい小説じゃない。そしてプロとアマチュアの違いはそこでもあります。だからホント、全てにおいて、です。他者とかかわることは傷を負うこともあるし、怖いことでもありますが。

 

「最初怖いって思ったけど、セックスしてみたら嫌じゃなかった。それどころか好きになっちゃうこともある。それはつながって伝えられたからです。僕たちは、セックスでしか伝えられない」

 

――一番深いコミュニケーションはセックスで、セックスすると相手のこともよくわかるし、好きになったらセックスしたいと思わないほうが嘘だと思う。仲良くなるのも知るのも、セックス。セックスでしかわからないことはあるから。

 

「絶対にあると思います。花房さんが面接ブログに書いていましたけど、セックスを手段にしちゃいけない。セックスがゴール地点でもあって欲しいし、そこから何か次のものが生まれて欲しいし、セックスは深いっていうか、正解がないっていうか」

 

――セックスには正直で、こんなにも力があるんだと、現場に行って思いました。よくも悪くも、です。セックスレスで離婚する夫婦は多いし、男女の仲を引き裂くのはセックスかお金。

 

「僕はセックスにこだわって、セックスを生業としてAV男優をやってきたから、セックスでこの先もなんか仕事して行けたら幸せだと思う」

 

――森林さんは、男優という仕事自身もですが、男優さんたちのこともお好きなんですね。

 

「好きですね。おもしろいですもんね、やっぱ。現場だから聞ける話っていうのがあります。現場だから女優の本名なんて知らない。本名って社会的な肩書きです。でも本音の部分は教えてくれる。旦那と上手くいってないとか、セフレがいるとか。人間の表の顔じゃなくて裏の顔だけど、本当の顔。それはあとくされがないから話してくれるんです。それを聞けるのは本当に楽しいし、男優はその経験をしているから、人間が面白い」

 

――セックスの世界の人って、人間がおもしろいなというのは、私も思います。

 

 

「だから、僕はずっとAV男優をやっていきたい。生まれ変わっても、AV男優になりたい、絶対に、やりたい」

 

 

 

 

 セックスの世界に生きる人間はおもしろく、魅力的で、人を惹きつける。

 たとえそれが危険で破滅の匂いを漂わせていても、哀しさを孕んでいても、この世に存在する、もっとも深く他人と関われる行為であるセックスを生業にする人たちこそが、熱い血の通う「人間」そのものだという気がするのだ。

 

 セックスが好き、AVが好き、仲間が好き――目を輝かせてそう語る森林原人の表情には、何の曇りもなく、純粋で、まっとうで、とても魅力的だ。

 

 リスクの大きい、セックスを仕事にする世界を、私は諸手をあげて肯定はできないままでいる。人を傷つけ、自分が傷つくことも確かにあるから。

 けれどそこでしか生きられない人たちがいるのも知っているし、その世界の存在に救われる人たちも多くいることを、知っている。

 私自身がそうだから。

 

 セックスでしかわからないことがある。

 セックスすることでしか、つながれないときがある。

 セックスで救われることも、ある。

 だからこそ、セックスを手段にしちゃいけない。けれど、そこへ向かうときが訪れたのなら、躊躇わずに、進んでいこう。

 森林原人と話して、あらためてそう思った。

 

 セックス――得体の知れない、それでいてひどく楽しく、この上ない快感をもたらし、時には人生を変え、人を極楽に導き、地獄に落すこともある、人間の営みに、私は死ぬまで惹かれ続けているだろう。

 

 

森さん⑥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森林原人

34歳
AV男優歴15年
出演本数7000〜8000本
座右の銘 「やらずに後悔するよりやって反省しよう」
将来の夢 生まれ変わってもAV男優

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