花房観音 -Hanabusa Kannon-

情交未遂

あなたの話を聞きたい、あなたのことを知りたい、誰も知らないあなたを、私の言葉で書き残したいーー言葉でまぐわいたいのです

怪談社 ~あやしの国の鬼たち~

怪談社 ~あやしの国の鬼たち~

2016年9月30日   インタビュー:花房観音   写真:花房観音   場所:大阪・十三にて

――既に竹書房から、4冊本を出しておられますよね。(*2012年当時)書かれたのは怪談社の書記の伊計翼さん。伊計さんとは、平山夢明さん監修の「饗宴3」で、ご一緒させていただきました。私ははじめて実話怪談を書いたんですが、結構頭を抱えました。もともと怪談――人を怖がらせるのは難しいというのがあって、しかも実話というのは脚色できない。その実話怪談の本を短期間に続けて書けるというのはすごいな、と。

 

紗那「怪談とひとくちに言っても、人が奇妙な行動をとるというのも怪談やしね」

 

――前にイベントで聞いた、猫を食べる女の子の話は、怖かったです。

 

紗那「不条理怪談というか、ああいう話はマニアの方が受けるかも。はっきりおばけが出るわけじゃない。人の気持ち悪さの話」

 

――それこそまさに、平山夢明さんがよく書いておられる系統の。頭がおかしい人の話とか。

 

紙舞「言葉が通じないですからね、怖い。理屈が通らない」

紗那「俺はバーやっとるから、そんなんいっぱい見とるよ。前に、うちの店に来て知らん女で『紗那さんの子供を妊娠したことがあります』って書いた紙を他の客にまわしとる女がおった。雨の中ドロップキックよ。なんでそんなことすんねん、て」

紙舞「その女の人は、自分の気持ちを納得させたかったとか」

紗那「知らんやん! 会ったこともないしライブに来たこともない女や」  

 

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――最近は、怪談文芸誌「幽」主宰の百物語にも参加されて、夏に東京での深川怪談にも出演されるということなんですが、「幽」編集長で文芸評論家の東雅夫さんも、関西での怪談社のイベントに足を運んだりされているのをよく見かけます。東さんと会われたのは、昨年のふるさと怪談がきっかけですか?

 

紗那「そう、大阪の和光寺でのふるさと怪談で、はじめて会った」

 

 

 ふるさと怪談とは――地域に根ざした文芸振興と、世代間/地域間コミュニケーション確立の一環として、仙台の出版社・荒蝦夷と作家・高橋克彦、民俗学者・赤坂憲雄、文芸評論家・東雅夫が中心となって2010年に開催された「みちのく怪談プロジェクト」という活動があり成功を収めていた。ところが第2回の準備を始めていた矢先に東日本大震災が起こり出版社・荒蝦夷および取次店、書店なども甚大な被害を受ける。その中で、荒蝦夷代表の土方正志氏は「鎮魂をテーマにみちのく怪談プロジェクトを続けたい」と願い、そのために怪談作家・出版社・有志達が立ち上がり全国で開催されている怪談イベントが「ふるさと怪談」だ。発揮人は文芸評論家で怪談文芸誌「幽」の編集長でもある東雅夫氏。集められた入場料、寄付金は全て「みちのく怪談プロジェクト」の支援金として寄託され、出演者・スタッフは全員ボランティアで参加する完全非営利の活動である。

 

 昨年、大阪で開催された「ふるさと怪談」は怪談社が中心となって、様々な作家達が参加した。京田辺で開催された際も、怪談社のふたりは駆けつけて募金をつのるなどの手伝いもしていたという。

 このふるさと怪談は、今年も全国各地で開催される予定である。(*現在も活動は継続中)

 

紗那「俺ら、知らんかってん、もともとそういう企画があったことを。ただ、大変やからなんか俺らに義捐金集めたりとか、やれることないかってメールで聞いてみろって。そしたらこいつ、かなりしぶってた」

紙舞「だって、あの東雅夫ですよ! って、ビビッたんですよ」

紗那「知るかボケ! さっさとメール送れ! って」

 

――大阪のふるさと怪談は、当初出演予定の東雅夫さん、三輪チサさん、黒木あるじさん、うえやま洋介犬さんに加えて、田辺青蛙さん、森山東さん、宍戸レイさん、朱雀門出さん、牧野修さんも参加されて、壮観でした。最後のチャリティーオークションでは、怪談社は「自分たちが家に行って怪談を語る権利」を売りに出したりもしてましたね。ああやって、作家さんたちが集まることは、お金のことだけではなく、世間の注目を集めるという意味で、貴重な機会だったと思います。怪談社のイベントには普段も観客として、前述の東雅夫さんをはじめ、作家さんたちが来られていて、いろんな人に会えるというのがあるんですね。私自身も、怪談社のイベントで縁を結んだ人もいますし、私自身が怪談を好きになりました。

 

紗那「そうやって、巻き込めていけたらいいね。語りの場が増えて、怪談を好きになるヤツを増やしていかんと、業界をあげて。怪談社だけでなく、皆でね。伊計は文才ないし、俺らもそこまでパワーがあるとは思えないし、だから俺らは磨いていかなあかん。伊計も腕をあげなあかん。伊計は伊計で努力してるんですよ、可哀想にー!」

 

――怪談の場は増えたでしょ。

 

紗那「でも、今、現在、怪談は文章の場であるって考えもある。逆に怪談はエンターティメントだから喋りがおもしろくないとダメという考えも。俺はどっちも違うと思ってて、文章も喋りも、みんなが愛せるような考えが重要。あとはみんなが表に出て、同じ空間に一緒におれるってのがいいね」

 

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