作家&コラムニスト・勝谷誠彦
なぜ戦う、なぜ生きる
2014年7月28日 インタビュー:花房観音 写真:木野内哲也 場所:渋谷のんべえ横丁他にて
――AV誌みたいなこと聞きますけど、初体験はいつですか?
「男? 女?」
――女性との。
「よく覚えてないな、それは」
――大学に入る前?
「いや、もっと奥手ですよ、風俗ライターはじめる前ぐらいかな」
――私は勝谷さんは、普通に女性が好きだと思ってるんですけど、全然ギラギラしたものは感じられないんです。女とやりたいとか、モテたいとか、そういう欲が皆無に見える。
「あのね、これもADHDの症状のひとつかもしれないんだけど、僕は欲望としてのセックスに興味がないの。発見と現象としてのセックスに興味があるの、ディスカバリーですよ。それは知らない国に行くのと一緒」
――それって、女性から、ひどい人って、言われませんか?
「勘のいい子は、会っただけでそれを察知して逃げる。多分、危険なオーラというよりも、宇宙人のような変なオーラがあるんじゃないかね。憧れてきてくれる子とか多いんですけど、一回ご飯食べただけで、みんなスッととんずらする。口説いたわけでも手を握ったわけでもないのよ、しないからね、そういうのは辞書にない。でも、こうやって語るわけですよ。花房さんは相当変態だから、僕の話をずっとこうして聞いてるけど、世の中の人は引くらしい」
――私、変態……ですか。自分ではノーマルな凡人だと思ってるんですけど……。
でも、本当に勝谷さんは、番組とかでも相当なエロ話はされても、そこに欲望を感じないんです。
「お坊さんみたいでしょ、もう突き抜けて解脱しちゃってる。最初に行ったようにあらゆる性の荒野を走り続けてきましたから。性欲はありますよ、でもそれを欲と言っていいのか、探求心と言っていいのか。カメラで被写体を撮るのと同じ」
――若い頃とか、誰でもいいからやりたい! みたいな時期はありませんでした?
「そんなのとんでもない。昔から僕は愛でる人なの、男でも女でも綺麗なものが好きで、めちゃめちゃ面食い。でもマネージャーのT-1君は『趣味が歪んでる』って言うけどね」
――初体験の相手は、恋人ですか。ちゃんとつきあった人。
「そうですね、恋人です」
――普段、長続きはします?
「両極端。T-1君は知ってるけど、僕と続く女は、あっちも変、普通じゃない。あるいは僕を飼育している動物のように思っているか」
――これから誰かと一緒に暮らす可能性はあります?
「ないね、女のほうも望まないでしょう。どんどん僕は人生を切り捨てていってる。普通の人が欲しいものはほとんどいらない。だからお坊さんみたいな生活ですよ」
――オナニーはします?
「ほとんどない。している様が美しくない」
――やっぱりそこでも美しさにこだわるんですか。
「こんなに着るものとかこだわらないのにね。子どもの頃に、親に美術館とか連れていかれて綺麗なもの見てきたから。やっぱり子どもの頃の影響って大きいんですよ。昭和30年代の開業医って貴族みたいなもので金があったから、とにかく美しいものを見て、美しくあれとかそういうことばかり教えられた気がする。それってだけど、一応、欲望がある20代
30代なんは発露してこないんだけど、40過ぎたらそういう深層面が出てくるね」
――セックス自体が、美しいことじゃないと思うんですけど。
「昔はそう思ってた。そもそも女ってのが美しくないと思ってたから」
――女性器って、グロいじゃないですか。
「そうそう、あんまり好きじゃない」
――じゃあ、クンニしない?
「しないって言ったら、プロとして失格でしょう。俺は風俗ジャーナリストだから。ちなみにその上に国際がつくんですよ。国際風俗ジャーナリスト」
――その美しくないセックスを生業にしてたのはなぜですか? 欲望を単に吐き出すため?
「うーん、なんなのかね。過去のことはわかんない。そらやりたいざかりは、それなりにやりたかったんだろうしね」
――風俗ジャーナリスト時代は、彼女はいました?
「いた。とんでもないやつだね、今考えると」