「別れの何が悲しいのですかと、三國連太郎は言った」 (著・宇津宮直子)
婦人公論に連載されていた、名優・三國連太郎の晩年(この言葉を使っていいのか迷うが)の日常を、二十年来の友人だった著者が描く。
一見、穏やかに見える三國夫妻の日々。
けれど、甘い物が好きで無口なこの老人は、「変わり者」「役者バカ」「結婚4回」そして、差別ゆえに虐げられた青春を送った俳優だ。
過去の女の話をするときに「愛してなかった」と言い、人も物も断ち切ることに容赦なく未練も持たない男。
心に残ったのは、女優・太地喜和子との関係を「恋じゃなかった、愛でもなかった、でもほんもの」と語った言葉。
「恋地獄」を書いている時に、むしょうに太地喜和子の本が読みたくなり、久々に手に取った。
破滅せざるをえない過剰な女優、そして女。
男は女の熱に巻き込まれ、そして逃げた。
女が事故死してからも、男の中には女への恐怖のような感情が残った。
女は死ぬまで、男への情熱を語ることで、男を追い、男の親の墓のそばで、死んだ。
2013年11月18日
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