阿古屋
先日、大阪の国立文楽劇場の新春公演に行ってまいりました。
リズールで、作家さんたちが熱く話しておられたのを聞いて、「行かな損!」と思ったからです。
行ってよかった、ホントに。
文楽は、以前、文楽鑑賞教室で少し観たぐらいで、ちゃんと公演に行くのは初めてです。
圧巻は「壇浦兜戦記」の阿古屋。
京都五条の傾城・阿古屋は情人であった平景清を探ろうと捕らわれます。
そこで、景清との馴れ初めなどを聴かれ、琴や胡弓や三味線をひかされます。
「官能」という言葉が、相応しい女でした。
ゾっとするほど艶っぽい女を見たのは久々……なのですが、人形なんですよね……。
それが「芸」の凄さです。
景清を想い、音を奏でる阿古屋のしぐさや目線のひとつひとつに色艶が漂っている。
「色気のある女」とは、心にも身体にも愛する男の記憶をまとわりつかせている女なのだと、思いました。
たとえたくさんの男と寝ても、記憶を残さなない女もいます。
ひとりの男しか寝ていないけれど、記憶をべったりはりつけている女も。
どれだけ深く、その男の記憶を身体にも心にも染み込ませているか――。
記憶に残らない男なんて、つまらない。記憶に残らないような、すぐに忘れられるような男なんて。
それは未練や執着なのかもしれませんけれど、色艶はそこから生まれるものだと思いました。
2014年1月25日
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