「愛才」 著・大石静
何度も何度も繰り返し読んだ本です。
脚本家・大石静さんの処女小説「愛才」。
夫以外の男を愛してしまう主人公。その男はエキセントリックな元人気俳優。
妻は夫に自分の恋愛を話している。
すでに夫婦は男と女としての恋愛期間は終わり、仲の良いパートナー、家族となっているので、それぞれが婚外恋愛を楽しむような関係だった。
女は元売れない女優で、若くして癌のために道を断念する。けれど脚本家として次第に売れっ子となっていく。
それにつれて、女と恋人の関係も、夫を巻き込み変化していく……。
久しぶりに読みました。小説家になって、結婚してからの再読ははじめてです。
主人公が脚本家として売れて腹をくくり「命を削って」仕事をするようになってからの恋人と夫への目線が、こわい。
主人公の世間からは外れてはいるけれど、刹那的でまさに「命がけ」の生き方がとても切なく、また物を書く人間がまわりに向ける残酷な視点と行動に、最初に読んだときから「物を書くことを仕事にするのは、恐ろしいことだ」と思いました。
けれど、これを読んだ時に、私は主人公のように「物書きとして生きていく」ことに焦がれたのです。
ある種の人たちには常識を逸脱して理解できない話なのかもしれません。
でもこの主人公の「命がけ」の生き方の美しさに、何度も泣きながら読みました。
2013年9月10日
ブログ