「祇園の男」 瀬戸内晴美
瀬戸内晴美(寂聴)「祇園の男」を読みました。
祇園の「男衆」が主人公の短編です。
舞妓さんて、着物をひとりで着られないんです。
あの、「だらりの帯」あれを締め付けるのは女の力でも難しくて、「男衆」という着付け師がぎゅーっ! と力入れて締めてるんです。
花街には今でも「男衆」さんが数人いらっしゃって、お座敷前の舞妓さんの着付けを手伝っておられます。
この舞妓さんには、この男衆さんと、決まっているそうです。
舞妓さんがデビューして挨拶まわりをする「お見せ出し」に付き添われ、舞妓さんが「襟替え」をして芸妓さんになり、引退するまでひとりの男衆さんが担当するのだとか。
着付けを手伝うって、ものすごいエロティックではありませんか?
そしてもちろん、舞妓さんと男衆さんの恋愛はご法度です。
「祇園の男」は、そのタブーを破った男の話です。
とても官能的な物語でした。
私も以前、男衆さんに着付けをしてもらったことがあります。
「花祀り」に同時収録された坊主と舞妓の話「花散らし」を書くときに、自分も舞妓さんの格好をしたのです。
もちろん、「舞妓変身処」に行きました。そこは本物の現役の男衆さんが着付けをしてくださり、着物も実際に舞妓さんや芸妓さんが着られたものがあるということでした。
男衆さんに着付けしてもらい……いや、大変でした。
男衆さんは親指と人差し指の間が切れのだとおっしゃってました。そこに帯をはさんでぎゅーっとするから。
そもそも舞妓の着物って、15キロとか20キロとか言われています。
そしてあの「おこぼ」という20cmはありそうなぽっくり下駄のバランスの悪いこと!
舞妓さんは肉体労働だと思いました。
舞妓姿で写真を撮っていただいたのですが、もう見られたもんじゃない。
白塗りの自分が、あまりにも母親に似ていて……へこみました。
けど男衆さんのお話は非常に勉強になったので、機会があれば花街のことはもっと調べてみたいです。